【2025年版】Common Entrance 13+完全ガイド:英国名門私立校への道
目次
お子さまを英国のインディペンデントスクール(私立校)へ進学させたいとお考えの保護者の方にとって、「Common Entrance (CE) 13+」は、入学選考における最も伝統的で重要な関門です。この試験は、生徒が準備校(プレップスクール)からシニアスクール(中等教育学校)へ進むYear 8の段階で受験します。
本記事では、ISEBの公式シラバスに基づき、CE 13+の試験内容、評価基準、そして具体的な学習方法までを徹底的に掘り下げて解説します。お子さまが自信を持って試験に臨めるよう、この詳細ガイドをぜひご活用ください。
Common Entrance 13+とは何か?
Common Entrance(略称CE)は、ISEBによって作成・標準化された、英国私立学校への入学試験です。特に13+試験は、13歳(Year 8)の生徒が翌年9月からYear 9としてシニアスクールに入学するために使われます。
この試験は単なる合否判定テストではありません。プレップスクールでの学習到達度を測り、シニアスクールでの学びに必要な学力とスキルが備わっているかを示すための診断ツールとして機能します。ISEBが問題を作成し、採点は各シニアスクールが自校の入学基準に沿って行うのが特徴です。
| 基本情報 ・実施時期: 主にYear 8の夏学期(6月)に実施。秋学期(11月)と春学期(1月)にも受験機会があります。 ・必須科目: 英語、数学、科学。 ・その他の科目(学校によって異なる):フランス語、地理、ドイツ語、古典ギリシャ語、歴史、ラテン語、TPR(宗教・哲学・倫理)、スペイン語 ・レベル設定: 数学と科学では、難易度の異なるレベルが設定されています。志望校がどのレベルを要求するかを必ず事前に確認してください。 ・試験会場: 原則として、受験生が在籍している準備校(プレップスクール)で実施されます。 |
受験の申込みとプロセス
CE 13+ の受験申込みは、個人がISEBに直接行うわけではなく、学校間での連携によって進められます。
- 志望校への出願登録 (Year 5-6): 通常、入学の2〜3年前に、保護者の方が進学を希望するシニアスクールに直接出願登録を行います。
- ISEB Common Pre-Tests 受験 (Year 6-7): 多くの学校が、このオンライン適性試験の結果を、仮合格を出すための主要な判断材料の一つとします。
- 仮合格(Conditional Offer)の獲得: Pre-Testsの結果、プレップスクールからの成績表、面接などを経て、シニアスクールから「CE 13+で本校の定める基準をクリアすること」を条件とした仮合格が出されます。
- CE受験手続き (Year 8): 仮合格を得た後、在籍中のプレップスクールが、志望先のシニアスクール(採点校)を指定してISEBにCEの受験登録を行います。
試験内容と構成
Part 1: 英語(English)
CE 13+の英語試験は、全受験者がWritingペーパーを受験し、ReadingペーパーはFoundationまたはCoreのいずれかを選択します。どちらのリーディングペーパーを受験するかは、シニアスクールとの協議によって決定されます。
Reading Paper (1時間10分、50点)
EITHER: Foundation Reading このペーパーは、Coreレベルのスキルや語彙をまだ発展途上の生徒向けに設計されています。未見の散文(prose)パッセージに対する理解度を評価します。
- Section A (15点): 多肢選択問題(8問)。文章の情報を正確に選択する力、複雑な意味の把握、文法、語彙、慣用句の理解をテストします。
- Section B (25点): より発展的な応答を求める問題。文章の意味や言語の効果について、より深く掘り下げて記述します。
- Section C (10点): 指示付きのライティング問題。文章から得られる情報を活用しつつ、共感的かつ想像力豊かに応答する能力を評価します。
OR: Core Reading このペーパーは、散文、詩(poetry)、または戯曲(drama)のいずれかである未見のテキストに対する理解度を評価します。
- Section A (15点): 多肢選択問題(8問)。文法的な意味、語彙、慣用句の理解、および情報の選択能力をテストします。
- Section B (25点): 段階的に難易度が上がる記述問題。推論(inference)、言語・イメージ・形式の効果への応答、文脈における意味の把握など、より深い理解度をテストします。引用を用いて自分の考えを裏付けるなど、完全な文章での応答が求められます。
- Section C (10点): Section Bから直接続く、文章全体に対する長文記述問題。Point-Explanation-Evidence-Analysis (PEEA) のようなモデルを用いて、明確に構成された3段落の論証を展開することが期待されます。
Writing Paper (1時間15分、50点)
このペーパーは全レベルの受験者のライティングスキルを評価するために設計されています。4つの選択肢から2つを選んで解答します。課題には、物語、描写文、報告書、説得力のあるスピーチ、問題を論じて推薦を行う手紙などが含まれます。
評価の内訳:
- Response (各課題15点、計30点):
- プロンプト(指示)を明確に活用しているか。
- アイデアが効果的に構成・構築されているか。
- 目的と形式に適した特徴を用いているか。
- 視点、声(voice)、文体(register)が適切か。
- Language (各課題10点、計20点):
- スペルの正確さ。
- 文の句読点の正確さ。
- 文構造の多様性。
- 表現と語彙の豊かさ、正確さ、想像力。
- 時制の一貫性。
Part 2: 数学(Mathematics)
CE 13+の数学試験は、複数のレベルのペーパーで構成されており、志望校の要求に応じて受験するレベルが決定されます。全てのレベルで、筆記形式のメンタルアリスメティック(暗算)テストが実施されます。
試験構成
- Core Papers (標準レベル): ほとんどの生徒が受験します。
- Non-Calculator Paper (電卓不可): 60分
- Calculator Paper (電卓可): 60分
- Mental Arithmetic Test: 約10分
- Foundation Papers (基礎レベル): 個別の事情に応じて、シニアスクールとの合意の上で選択されるサポート用のペーパーです。
- Non-Calculator Paper: 60分
- Calculator Paper: 60分
- Mental Arithmetic Test: 約10分
- Additional Paper (応用レベル): より高い能力を持つ生徒向けのオプションのペーパーです。
- Calculator Paper: 60分
- Core Papersに加えて受験します。
Core Level: 主な出題範囲
数 (Number)
- 基本: 整数、小数、分数の四則演算。負の数、順序付け。
- 数の性質: 素数、約数、倍数。最高公約数(HCF)と最小公倍数(LCM)は暗に問われます。
- 分数・小数・パーセント: 相互変換、割合の計算、ある数量を別の数量の分数やパーセントで表すこと。
- 比と割合: 簡単な比、与えられた比での数量の分割。
- 計算: べき乗(平方、立方)と平方根、計算の順序(ブラケット含む)、概算。
代数 (Algebra)
- 式の操作: 文字式の単純化(同類項をまとめる)、式の展開(ブラケットを外す)、因数分解(共通の数でくくる)。
- 式と方程式: 式への代入、一次方程式の解法(変数が両辺にあるもの、分数を含むものも含む)。
- 公式: 与えられた公式の使用、実世界の状況を表すグラフの作成。
- グラフ: 座標平面上での直線のグラフ (y=mx+c, y=a, x=a) の描画。
- 数列: 等差数列、等比数列の次の項や規則性の発見。
幾何学と測定 (Geometry and Measures)
- 単位と測定: 時間、メートル法単位の知識と変換。速度・距離・時間の計算。
- 図形の性質: 2D図形(三角形から十角形までの多角形、各種四角形)の名称と性質。線対称と回転対称。
- 角度: 直線上の角、点における角、対頂角、平行線の錯角・同位角、三角形や多角形の内角・外角の計算。
- 面積と周の長さ: 長方形、三角形、平行四辺形、台形、円、およびそれらを組み合わせた複合図形の面積と周の長さ。
- 立体: 直方体や角柱の面・辺・頂点の数、展開図、表面積、体積。
確率と統計 (Probability and Statistics)
- 確率: 確率の範囲 (0から1)、確率の表現(分数)、起こりうるすべての結果のリストアップ。
- 統計: データセットの平均値、中央値、最頻値、範囲の計算。度数分布表、棒グラフ、円グラフの解釈。
Additional Paper: 追加される主な出題範囲
Coreレベルの内容に加え、以下のより高度なトピックが含まれます。
- ピタゴラスの定理: 直角三角形における辺の長さの計算。
- 高度な代数:
- 公式の変形(特定の文字について解く)。
- 連立方程式の解法(代数的またはグラフ的)。
- より複雑な方程式(分母が複数あるものなど)。
- 二次方程式の簡単な例。
- 代数的な証明。
- グラフ: 放物線や反比例のグラフの描画。
- 立体: 角柱や円柱の体積と表面積。
- パーセンテージ: 元の値を求める問題(リバースパーセンテージ)。
- 数列: n番目の項の公式(一般項)が明示的に問われます。
- その他: 有効数字、標準形(Standard Form)。
Part 3: 科学(Science)
CE 13+の科学試験は、CoreとFoundationの2つのレベルに分かれています。11+で学んだ内容は既知として扱われ、試験範囲に含まれる可能性があります。また、全レベルで**「科学者として考え、探求する (Thinking and Working as a Scientist – TWAS)」**スキルが重視され、全マークの最低25%を占めます。
試験構成
- Core (標準レベル): 生物・化学・物理の3つの独立したペーパーで構成されます。
- Biology Paper: 40分
- Chemistry Paper: 40分
- Physics Paper: 40分
- Foundation (基礎レベル): 生物・化学・物理のトピックを網羅した1つの総合ペーパーです。
- Combined Science Paper: 60分
生物 (Biology)
- 生命の構成:細胞→組織→器官→器官系。動物・植物細胞の構造と機能。
- 栄養と健康:炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミンの役割とバランスの重要性。
- 呼吸とガス交換:横隔膜・肋骨の動き、肺でのガス交換の仕組み。
- 生殖:ヒトの生殖器系と胎児の発育、植物の受粉と種子散布。
- 光合成:語句反応式と酸素・バイオマス生成の役割。
- 細胞呼吸:好気・嫌気呼吸の語句反応式とエネルギー放出。
- 生態系:食物網、相互依存、人間活動の影響と保全。
- 分類:5界と、節足動物・脊椎動物の特徴。
化学 (Chemistry)
- 物質の状態:粒子モデルによる固・液・気の性質と拡散・変化。
- 原子・元素・化合物:原子モデル、化学式、性質の違い。
- 混合物と分離:純物質との違い、蒸留・クロマトグラフィー。
- 化学反応:燃焼(酸素と気候変動)、酸化(さび防止)、熱分解、酸とアルカリ(pH・中和・酸性雨)。
- 反応式:語句反応式の記述、気体の確認法(H₂, O₂, CO₂)。
物理 (Physics)
- エネルギー:多様なエネルギー形態と保存則、再生可能・非再生の比較。
- 力と運動:速度=距離÷時間、力の単位(N)、W=mg、摩擦・抵抗。
- 圧力と密度:P=F/A、Density=m/V の計算と応用。
- 波:音(振動・周波数・振幅)、光(反射・屈折・分散)。
- 電気と磁気:直列・並列、電流の流れと測定、磁場と電磁石。
- 宇宙:地球の自転・公転、惑星、日食・月食、人工衛星。
その他の科目
- フランス語・ドイツ語・スペイン語:日常会話・読解・作文・リスニングを中心に学びます。
- ラテン語・古典ギリシャ語:古典文法や翻訳、文化知識を扱います。
- 歴史:主にイギリス史。因果関係や資料の読み取り、論述力が評価されます。
- 地理:自然・人文地理、地図やデータの読み取りなど。
- TPR(宗教・哲学・倫理):キリスト教を中心に、多宗教や哲学的テーマへの理解を問います。
効率的なCE 13+ 対策と戦略的学習計画
- Year 7:基礎固めの時期
- 各科目の基礎概念を徹底的に理解し、語彙を増やします。
- 読書習慣を確立し、様々なジャンルの本に触れます。
- 計算の正確性とスピードを向上させます。
- Year 8 (Autumn/Spring Term):応用力養成と弱点克服
- 過去問を使い始め、問題形式に慣れます。
- 間違えた問題を分析し、自分の弱点分野を特定して集中的に学習します。
- エッセイや長文記述問題の構成力を高める練習をします。
- Year 8 (Summer Term):実戦演習と時間管理
- 本番と同じ条件下(時間厳守)で過去問を解く練習を繰り返します。
- 時間配分の戦略を確立し、見直しの時間を確保する習慣をつけます。
- 体調管理と精神的な準備に重点を置きます。
試験結果とその役割
- 合否判定ではない: CEの結果は、シニアスクールが志願者を総合的に評価するための一つの材料です。プレップスクールの校長からの推薦状、面接での受け答え、課外活動での実績なども同様に重要視されます。
- 入学後のクラス分け: 試験結果は、入学後のクラス分け(セッティング)の参考にされることが多く、生徒が適切なレベルで学習をスタートするために役立てられます。
- 基準は学校次第: 「何%取れば合格」という明確な基準はありません。トップ校では全科目で70%以上が期待されることもありますが、学校の難易度や方針によって基準は大きく異なります。
終わりに
Common Entrance 13+は、長期間にわたる学習の成果を問う、挑戦しがいのある試験です。単なる知識の暗記ではなく、学んだことを応用し、論理的に思考し、明確に表現する能力が求められます。これは、シニアスクール以降のより高度な学びで成功するための礎となります。
この試験は、プレップスクールでの学びの集大成であると同時に、お子さまが次のステージへと飛躍するための重要なステップです。本ガイドが、その道のりを歩む皆さまの一助となることを心から願っています。
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