ESATスタイル例題を解いてみよう
目次
はじめに
イギリスの一流大学で工学・物理学・自然科学・獣医学などの学部を目指す場合、UCAS出願書類だけでは入学審査が十分に行われないことがあります。そこで重要になるのが ESAT(Engineering and Science Admissions Test)、日本語で「工学・理科入試試験」です。
本記事では、ESAT Physicsで求められる思考力を体感できる問題を2題ご紹介します。
1問目はESATの前身にあたるENGAA(Engineering Admissions Assessment)の2020年の過去問で、多くの受験生が典型的な勘違いをしてしまう力学の問題です。2問目はEGCISオリジナルの問題で、こちらは計算量自体は少なく、ESATの中では比較的やさしい部類に入る一問です。それぞれどこでつまずきやすいのか、順番に見ていきましょう。
問題1:2020年ENGAA より(ロケットの加速度)
まずは原文のまま確認しましょう(2020年ENGAAからの出題です。ENGAAはESAT導入前にCambridge・Imperialなどが利用していたテストで、内容の傾向はESATのPhysicsモジュールとよく似ています)。
A rocket travelling in space is burning its fuel at a constant rate. By expelling the burnt fuel through a nozzle, the engine is applying a constant force to the rocket. What is happening to the magnitude of the acceleration of the rocket?
- A It is increasing at an increasing rate.
- B It is increasing at a constant rate.
- C It is increasing at a decreasing rate.
- D It is not changing.
- E It is decreasing at an increasing rate.
- F It is decreasing at a constant rate.
- G It is decreasing at a decreasing rate.
落とし穴:なぜ多くの受験生がDを選んでしまうのか
この問題で圧倒的に多い誤答がDです。理由はシンプルで、多くの受験生がNewtonの第二法則 F = ma を思い出し、「Fが一定(constant force)なら、加速度aも一定のはず」と考えてしまうからです。問題文にはっきりと「constant force」と書かれているため、この結論は一見もっともらしく感じられます。
しかし、ここで見落としてはいけないのが「a constant rate(一定の割合で燃料を燃焼している)」というもう一つの条件です。ロケットは燃料を燃やして噴射するたびに自分自身の質量mを失っていきます。F = ma を a = F/m と書き直してみると、Fが一定であっても、mが時間とともに減っていく以上、aは一定ではいられません。「Fが一定」という情報だけに気を取られ、「mも変化している」という点を見落としてしまうのが、この問題最大の落とし穴です。
数式で確認する
燃料が一定の割合で燃焼している、つまり Mass mが一定の割合kで減っていくとします。時刻tでのMassは次のように書けます。
m(t) = m₀ − kt (m₀は初期質量、kは燃料が減っていく一定の割合)
Acceleration は a(t) = F / m(t) = F / (m₀ − kt) となります。tが増えるほど分母(m₀ − kt)は小さくなっていくので、aはどんどん大きくなっていきます。ここまでで、少なくとも「aは増加していく」ことが分かり、D・E・F・Gはすべて除外できます。
次に、「増え方」が一定なのか、加速しているのか、それとも鈍化しているのかを確認しましょう。具体的な数値で試してみると分かりやすくなります。たとえば F = 10、m₀ = 10、k = 1として、t = 0, 1, 2, 3, 4, 5でのaを計算してみます。
| t | m | a = F/m | aの増分(前の値との差) |
|---|---|---|---|
| 0 | 10 | 1.000 | ― |
| 1 | 9 | 1.111 | +0.111 |
| 2 | 8 | 1.250 | +0.139 |
| 3 | 7 | 1.429 | +0.179 |
| 4 | 6 | 1.667 | +0.238 |
| 5 | 5 | 2.000 | +0.333 |
aの値そのものが増えているだけでなく、aの「増分」自体もどんどん大きくなっていることが分かります。つまり加速度は増加しながら、その増加のペース自体も速くなっているということです。したがって正解はA「It is increasing at an increasing rate」です。
問題2:EGCISオリジナル問題(抵抗ネットワーク)
2問目はEGCISが作成したオリジナル問題です。計算量は少なく、ESATの中では比較的やさしい部類に入りますが、考え方を知っているかどうかで解答スピードに大きな差が出ます。
A resistor network initially consists of a single resistor of resistance R. At each step, another resistor of resistance R is connected in parallel with the entire network. After infinitely many steps, the equivalent resistance is X. If every resistor in the network is replaced with one of resistance 2R, what is the new equivalent resistance?
- A) X
- B) X / 2
- C) 2X
- D) 4X
解答への道筋:計算しなくても解ける理由
実は、この問題はXの値を実際に計算しなくても解けます。Networkがseriesであってもparallelであっても、あるいはその組み合わせであっても、すべてのresistorの値をk倍すれば、network全体のequivalent resistanceも必ずk倍になります。
Series:R_eq = R₁ + R₂ + … なので、すべてのresistorをk倍すればR_eqもそのままk倍になる。
Parallel:1/R_eq = 1/R₁ + 1/R₂ + … という関係なので、すべてをk倍すると右辺全体が1/kになり、R_eqもk倍になる。
This property holds no matter how complicated the network is——series・parallelがどれだけ入れ子になっていても関係ありません。今回のnetworkはseriesとparallelの組み合わせだけで作られているため、すべてのresistorをRから2Rに置き換えれば、equivalent resistanceも必ず2倍になります。つまりXの具体的な値が何であっても、答えは2X。正解はCです。
この問題のポイントは、Xを実際に計算できるかではなく、「resistorをすべてk倍すれば、networkのequivalent resistanceもk倍になる」という一般的なruleを知っているかどうかです。無限級数の計算(infinite series)に時間をかけてしまうと、時間切れになりかねません。
この2問から学べること
形式はまったく異なる2問ですが、どちらも「公式を機械的に当てはめるだけでは間違える」という共通点があります。
- 問題1:F = ma という公式自体は正しくても、式の中の変数(この場合はm)が時間とともに変化することを見落とすと、誤った結論にたどり着いてしまう。
- 問題2:問題文が「具体的な数値を求めよ」と言っているように見えても、具体的な計算をせずに解けることがある。まず「本当にこの値を計算する必要があるのか」を考える。
ESATは1モジュール40分・27問というかなり限られた時間の中で解く試験です。すべての問題をゴリ押しで計算しきる時間はありません。だからこそ、公式を思い出した瞬間に手を動かし始めるのではなく、一呼吸置いて「もっと速く・スマートに解ける方法はないか」を考える癖をつけることが、時間内に正しい選択肢へたどり着くための一番の近道です。
おわりに:EGCISのご紹介
EGCISでは、インターナショナルスクール生の海外大学進学に精通した講師陣が、TMUA・ESATといった専門アドミッションテスト対策から、実践的な模擬面接まで一貫してサポートしています。また、公式過去問の出題傾向を徹底的に分析したEGCISオリジナルの模擬試験もご用意しており、本番を見据えた実践的な対策が可能です。ESATの受験をご検討中の方は、ぜひ無料体験レッスンでEGCISの指導をご体感ください。
問題1は2020年のENGAA past paperからの引用です。問題2はEGCISが作成したオリジナル問題です。実際の出題形式や過去問については、UAT-UKの公式サイトで公開されている過去問を必ずご確認ください。

